空間工房

  • コラム

本人には内緒ですが、、

 片付けがきらいで机の周りはいつも汚くてモノが山積み。現場の段取りは思い付きで業者さんを呼ぶから、違う工種の職人さんが何人もいて、まるで突貫工事のよう。現場の掃除なんてしないから床がゴミだらけ。自分が呼ばれて行った現場は作業前にとりあえず掃除。大雑把な性格上、現場の段取りは向いていません。

 その人、自分の師匠です。

 そんな師匠ですが、図面、とくに手描きパースが絶妙です。床やガラス、硬いモノに当たる光の反射や、ソファやカーテンなどの柔らかい質感が、見る人全てを引き込むチカラがあります。大雑把な人がどうしてこんな繊細な絵を描くのかとギャップが大きくて不思議です。

 自分が20歳のとき入社したインテリアデザイン事務所の社長が師匠です。

 「この仕事を続けるのなら、図面やパースを沢山描いて、手で覚えろ。資格も取れ。そのために勉強しろ。知識と技術を身に付けろ。」と、建築やインテリアデザイン未経験、シロウトの自分にいろんな事を教えてくれました。

 自分では描く度に上手くなったと思うパースも、「線が固い。手首をもっと柔らかくして線に強弱をつけろ。ヘタクソ。」と、厳しい指摘ばかりでしたが、そのうち、「まあまあかな。」と言ってもらえるようになったときは嬉しかったです。

 独立して27年経ちますが、たまに偶然会うことがあります。ほとんどはホームセンターで資材や工具の買い出し中ですが、話しかける時は背筋が伸びます。近況報告ぐらいの話題ですが、なんか、少し緊張してしまいます。

 自分が勝手に師匠と思っているので、本人はその呼び方を知りませんし、敢えて直接呼ぶつもりもありません。

 師匠は今、多分70代前半。これも本人には言いませんが、元々現場管理に向いていないし、年齢的にも、図面だけ描いて現場を自分に任せてくれたら協力するんだけどなぁ。

もし、今自分が描いたパースを見せたら、相変わらず言うんだろうなあ。「まあまあかな。」と。

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富山県中小企業ビヨンドコロナ補助金活用事業(令和4年12月20日作成)