空間工房

  • コラム

お父さんの歴史

 減築工事を行いました。築60年、多分それ以上。それまで住んでいらっしゃったお父さんが亡くなられて、誰も住まなくなった箇所を解体しました。

 お父さんは大正15年生まれでお爺さんと呼ぶ年齢ですが、高校生の時に亡くなった自分の父親と同い年で偶然名前も同じだったので、自分からすればお父さん呼びがしっくりきていまいた。

 家の具合が悪い箇所をお父さんに頼まれて何度か直しました。

 いつも居る部屋の古くなった床板を新しくしたり、トイレを使いやすい新しい便器に替えたり、重たくなった玄関引き戸のレールを新しくしたり、天井板を破って落ちてきたハクビシンを追い払って天井を直し、ハクビシンが出入りしそうな穴を塞いだこともありました。ハクビシンがきょうだいなのか親子なのか、3匹いたのには腰が引けました。

 他にもいくつかありますが、自分が手を加えた家を解体するのは切ない、寂しい、と、複雑な思いでした。

 解体前に不用品を処分しましたが、モノが多い。とにかく多い。溜めた約60年分。部屋全てにタンスやラックにぎっしりモノが詰まっていて、地域の不燃物回収に軽トラで何度も往復し、食器が入った段ボールは少なく見積もっても20個は運んだと思います。

 開けていない押入れの扉を開けたらまた食器、もーっ!またかっ!と、グチも出ましたが、片付けているうちに先に感じていた寂しさは影を潜め、昭和40年代の新聞やカセットテープやLPレコードを掘り出して、なつかし〜!お父さんが若い頃使っていた釣り道具や大工道具には使い込まれた味があり、お父さんの歴史を感じました。

 ご家族の了承を得て、お父さんの釣り道具と工具の一部を頂いてきました。古いモノなので、出番はなかなか無いかもしれませんが大切に使いたいと思います。

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富山県中小企業ビヨンドコロナ補助金活用事業(令和4年12月20日作成)