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郷愁
子供の頃住んでいた家は、お世辞にも素敵とは言えない家だった。
今で言う、まちなかの一軒家だが小学校に上がる時から住み始めたときで、すでに築20年は経過していたと思う。子供心にもボロいと思っていた。
断熱性能には無縁で夏は暑く冬は寒く、浴槽に水を張ってボイラーで沸かす風呂でシャワーは無く、浴槽のお湯を汲んで体を洗うお風呂、父が見よう見マネで貼ったトイレのタイルはデコボコだし、キッチンと呼ぶには程遠い狭い台所の3Kだ。アルミじゃなく木の桟にガラスが嵌めてある、開け閉めするにも力がいる窓だ。
ひとりっ子の僕のためにプレハブの勉強?部屋を建ててもらったが、元々あった6帖と8帖の2部屋で生活の全てを賄っていた。小学校低学年までは、親子3人ひと部屋で寝起きしていた。
父は随分前に、母も亡くなって3年半経つ。自由奔放な父と完璧主義で厳しい母。真逆な両親だったが、思い出すのは家族でこたつに入り、テレビを観ながら晩ごはんを食べ、その後も親子でずっと一緒に居たことだ。まさに、昭和時代の家族団らんだ。
住んでいるときは狭くてボロい家がイヤだったが、最近は、通り掛かりに見かけるまちなかの狭い家やその周囲のロケーションが懐かしく、郷愁を感じる。
郊外に広い家を建てて引っ越すのもいいが、住み慣れた我が家を快適に住めるように直し、思い出と共に暮らすのもひとつの選択肢かもしれない。
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