空間工房

  • コラム

幸福の予感

 身近な鳥、ツバメは人に近い民家の軒下に巣を作る。天敵であるカラスやヘビに襲われにくいからだ。また、虫しか食べないツバメは、農家では害虫を食べてくれる益鳥とされており、商店ではツバメが巣を作ると繁盛すると云われるのは、そこに由来しているそうだ。

 事務所の軒下に、ツバメが巣を作ったことがある。

 巣を作り、抱卵し、雛が孵ると、巣立つまでの約四週間、日の出から日没まで餌を運び続ける。自然の摂理に任せ、手出しせず放っておこうと思っても、孵った雛が日々大きくなるのを見ると気になって仕方がない。時間があれば眺めることが日課になってしまった。巣を眺めている間にも幾度となくエサを運んでくる親鳥のひたむきな姿を見ていたら、さて、自分も仕事頑張ろうと元気をもらってもいた。

 孵った5羽中、2羽が巣立った。全部巣立つと思い込んでいたが、体力が無かったり捕食されたりと、すぐそばにも野生の世界があることを痛感させられた。

 ツバメは、秋になると暖かい東南アジアへ渡る。移動距離は2.000~3.000km。秋から冬を現地で過ごし、春にまた日本へ戻ってくる。それだけの距離を往復し、生まれた場所に帰って来るとも言われ、小さな身体にそれだけの能力が備わっているのは驚きだ。

 花に花言葉があるように、鳥にも鳥言葉がある。ツバメの鳥言葉は「幸福の予感」。

 事務所の壁から出ているエアコンのダクトの出っ張りのわずかなスペースで、夜になると1羽のツバメが休んでいる。巣が別にあるのか、営巣できなかったのかはわからないが、巣立った1羽だったらいいな。と思うと、少しだけ幸せな気持ちになれる。

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富山県中小企業ビヨンドコロナ補助金活用事業(令和4年12月20日作成)